あなたがもし広告界にいて、先輩が近くにいたら質問してみましょう---これまでで最高の広告キャンペーンは何だったのか。
さあ、どんな答えが戻ってくるでしょう。
自分の手がけたキャンペーンがソレだという自信満々の人。どれが一番なんてランクづけは無理と答える人。最近ではアフガニスタン爆撃のときの米国政府キャンペーンかなぁと、皮肉っぽく答える人がいるかもしれませんね。
では、VWビートルの広告は? と重ねて訊いてみましょう。
1959年から76年までつづいた一連の広告は、カビ臭くなるどころか、今なお、広告の理想とまで称えられています。かりに“アドバタイジング・オブ・ザ・センチュリー”なる賞が選考されたら、今世紀を代表する広告に輝くのは間違いないと私はにらんでいます。
こうしたVWビートルの広告とはどのようなものか。その表現とは? 発想とは? それをあなたの目でたしかめていただきたいのです。
私はVWビートルの広告から、あふれるほど多くの事柄をまなびました。たとえば次のようなことです。
広告は楽しくなければいけない。
どの作品でもいいから、みてください。人をギョッとさせる広告も多い。けれど、すい寄せられるようにして読むと、どれも楽しくてファンになってしまう。それがVWビートルの広告です。
最高の広告は、相手の人生観を変えます。
「Think Small 小さいことが理想」という広告が好例です。有名な作品ですね。大きくて立派な自動車を持つことがステータスシンボルだった時代に、正反対のことを訴えたのです。
最初のブランドを作るのは、ファクトです。
ふんだんにおカネが使えるなら、イメージだけで押し通す戦略もアリです。しかし担当した広告会社、米国DDB社はその方法を選びませんでした(あまり予算がなかったのです)。
世界中のコピーライターやアートディレクターに見ていただきたい。ホームページで公開することにしたのは、そのためです。広告ばかりでなく、企画や商品開発に携わるすべての人におすすめしたい。クルマの広告と見ないで、創造的な仕事をするためのお手本にしていただければと思います。